インフルエンザの流行シーズンは「冬」というイメージがありますが、
実は夏でもインフルエンザに罹ることがあります。
9月ごろ学級閉鎖、という話を聞くこともありますし、
真夏に夏風邪や急性腎炎と思ったらインフルエンザだった、ということも。
この記事の目次
インフルエンザは冬だけの病気ではない
日本でのインフルエンザの主な流行期は11月末~3月末でした。
南半球のオーストラリアなどでは7~8月にインフルエンザが流行りますが、これは南半球ではこの時期が冬になるため。
そして、熱帯地方では、1年じゅう、インフルエンザに罹る人がいますが、どちらかというと雨季に流行する傾向があるそうです。
日本でも、沖縄や奄美大島では夏にインフルエンザが流行しています。
インフルエンザウイルスは1年中存在する
インフルエンザウイルスは1年中存在し、
日本の本州の冬場のような低温低湿度の環境でなければ生きていかれない、というわけではありません。
乾燥する環境でインフルエンザが流行るのは
インフルエンザにかかる人間の側の問題です。
乾燥していると、人の気管の粘膜から分泌される気道液が蒸発してしまいます。
気道液には塩分やたんぱく質などの抗ウイルス作用がある物質が含まれているのですが、
気道液が蒸発すると、鼻やのどから入り込んできたウイルスがそれらの物質に触れることがなく、粘膜上で生存、増殖しやすくなります。
一方、湿度が100%に近いような高湿度の状態でも、気道液がほとんど蒸発しないので、
抗ウイルス物質の濃度が低くなり、ウイルスにとって生存しやすい環境になります。
湿度40~60%程度の、ほどほどの湿度の場合が、気道液が抗ウイルス作用を発揮できる状態で、
ウイルスが人の気管粘膜上で生存しにくい環境になります。
このような理由で、
温帯地域では乾燥する冬、
熱帯地域では1年中インフルエンザが流行する、ということになるようです。
また、インフルエンザウイルスが、人の体の外に出た場合、
紫外線の量が多いほど、ウイルスは壊れやすくなります。
日本の冬、熱帯地方の雨季は、日照量が少ないこともインフルエンザ流行の原因となっているようです。
夏のインフルエンザと風邪や腎盂腎炎の区別は?
夏に呼吸器症状や熱が出ると、「夏風邪」と思ってしまいがちですよね。
また急な高熱、という点では急性腎盂腎炎があります。
こうした他の感染症と、夏のインフルエンザは症状にどんなちがいがあるのでしょうか?
夏のインフルエンザだからと言って、冬のインフルエンザとの症状の違いはありません。
インフルエンザと普通の風邪の一番の違いは、
発症後の症状の経過が急激か、比較的緩やか、という点です。
インフルエンザの場合は、
数日間の潜伏期間の後、
急激に38度以上の発熱、頭痛、筋肉痛、関節痛、全身倦怠感などの全身症状がまず現れ、
次いで、咳・のどの痛み・鼻水などの呼吸器症状が現れます。
吐き気、下痢などの消化器症状が出ることもあります。
風邪の場合は、
くしゃみ・鼻水・咳・のどの痛みなどの上気道症状から始まることが多く、
発熱はしても通常37~38度です。
下痢・吐き気などの消化器症状は出ることもあります。
急性腎盂腎炎は、腎臓の中の腎盂という尿が溜まる場所が細菌に感染して炎症を起こし、その炎症が腎臓まで広がったじょうたいです。
急激に38度以上の熱が出る点ではインフルエンザに似ていますが、
上気道症状はなく、背中の腎臓のあたりをたたくとかなりの痛みがあります。
また頻尿や排尿痛などの膀胱炎の症状を伴うこともあります。
急性腎盂腎炎の場合、治療は1週間~10日程度の抗生剤の服用となりますので、
インフルエンザや風邪とは治療法がちがいますので、
高熱が出て背中・腰の痛みが強い場合には、診察の際にそのことをよく伝えましょう。
インフルエンザの予防に重要な「相対湿度」「絶対湿度」とは?
インフルエンザの予防には、ウイルスが呼吸器の粘膜上で生存しにくいような湿度を保つこと、が重要なのですが、
実は、湿度は2種類ある、とご存知でしょうか?
私たちが普段使っている湿度20%、という言い方は、相対湿度です。
これは、空気に含むことができる最大の水分量に対する実際に含まれている水分量の割合(%)のことです。
例えば、空気1㎏中の水分量が4gで、その時空気1㎏に含むことができる最大水分量が10gだとすると、
相対湿度は40%となります。
空気1㎏中に含むことができる水分量は気温の上昇によって増えますので、
気温12℃では相対湿度50%でも、気温25℃になると22%にということになります。
冬、湿度が40%くらいあると表示されていても空気が乾いている、と感じるのはそのためです。
一方、絶対湿度とは空気中に含まれる水分の重さそのものをいい、単位はg/kg’*1で表されます。
インフルエンザウイルスは下の表のように、絶対湿度17g/kgくらいになるとかなり生存しにくくなります。
いつも正確に絶対湿度を知るのは困難ですが、
部屋の中の湿度に関して言えば、室温をある程度温かく保ったうえで、相対湿度50%程度にしないと
インフルエンザ予防の効果はないんですね。
また外出して外を歩いているときには温度も湿度も自分ではコントロールできませんので、
マスクをつけて自分の呼気である程度の湿度を保つことも大切です。
夏のインフルエンザに注意!症状の特徴・夏風邪との違いは? まとめ
2009年の夏は、日本の本州でも新型インフルエンザの流行がありましたが、
新型に限らず、どの型のインフルエンザも夏でもかかる可能性はあるのですね。
ここでは湿度と温度に着目した予防の考え方をご紹介しましたが、
もちろん、基本として、手洗い、うがい、十分な睡眠時間、規則正しい生活は重要です。