鶏ムネ肉はモモ肉よりも脂肪分が少なく、ダイエット向きで疲労回復であるイミダペプチドを含み、お値段も手ごろ。
そんな鶏むね肉をおいしく食べる簡単な調理法として、
鶏ハムやサラダチキンが人気です。
ほとんどほったらかしでできて、サンドイッチやサラダ、麺類の具に使うことができるすぐれものですが、
この作り方では、できあがってから切ると中心部が生だったりすることがあるんですね。
特に、鶏肉を巻いて作る鶏ハムは、表面から中心までの距離が長くなるので、
ちゃんと温度のコントロールができる作り方で作る必要があります。
目次
鶏ハムで起こる食中毒のリスクとは?
鶏むね肉は、加熱するとパサパサになりやすい、という欠点がありますが、
鶏ハムは、
- 塩と砂糖を擦り込んで数時間以上寝かせること
- 低温調理法で40℃~65℃の温度帯をゆっくりと通過させてたんぱく質の硬化を防ぐこと
で鶏むね肉をしっとり仕上げることができます。
「沸騰したお湯に入れて、その後火を止めてお湯が冷めるまで放置する」
という作り方は、できるだけ低い温度でむね肉を加熱するための作り方なのですが、
この方法では、
- 鶏むね肉の大きさ
- 鶏むね肉の温度(冷蔵庫から出したてか)
- どのくらいの直径に巻いたか
- 鍋の大きさ
- 鍋の材質
- 鍋の厚み
- お湯の量
など、という不確定な要素が多く、鶏ハムの中心部まで62~65℃にならない可能性があります。
実際、
「できたと思って切ったら、中が生だった!」
という失敗もききます。
料理家の栗原はるみさんは、 2016年 7月1日 NHK「きょうの料理」で
ラップで巻いた鶏ハムをジッパー付き密閉袋に入れて空気を抜き、沸騰したお湯に投入して、すぐに火を止めて蓋をして3時間おく、
という作り方を紹介しています。
この作り方は
- 巻いた鶏ハムの直径を7、8cm以下にすること
- 密閉袋に入れたらストローで空気をできるだけ吸いだす
- 保温性が高い鍋を使う
などできるだけ中心部まで熱が通りやすくなる工夫はされていますが、
中が生だった場合、食中毒の原因菌が繁殖している可能性もあります。
生だった場合、追加のレンジ加熱だけで大丈夫なのか?
はちょっと気になります。
鶏ハムの中までしっかり火を通す方法
安全のために、沸騰したお湯に鶏むね肉を入れてがんがん、ゆでると低温調理にならず、肉がぱさぱさになります。
要は、外側からは70℃程度で加熱し、中心部が62~65℃くらいにキープされていればいいのです。
家庭で、適温のキープが簡単にできる方法としては、
炊飯器、保温鍋、専用の低温調理器を使う
などがあります。
炊飯器を使う
一般家庭にあるもので、鶏ハム作りに適した温度を簡単にキープできるのが、電気炊飯器の保温機能です。
保温は、だいたいの機種が72℃程度なので、この中にお湯と巻いた鶏ハムを入れて1時間加熱すれば、高温になりすぎずに火を通すことができます。
真空保温鍋を使う
シャトルシェフのような真空保温鍋がある場合は、70℃程度をキープして加熱することができます。
サーモス「シャトルシェフ」の公式サイトの鶏ハムレシピのページ
http://www.thermos.jp/recipe/detail/443.html
では沸騰したお湯に鶏ハムを入れて再沸騰後2分加熱、その後保温容器に入れて60分、となっています。
ちなみに、このレシピでは皮つき胸肉を皮がついたまま使っていますが、皮を取った方が食感がよいです。
低温調理器を使う
ANOVAやBONIQなど、スティックタイプの低温調理器は、
鍋に張った水(ぬるま湯)にセットしてスイッチを入れると、
指定した温度をキープしてくれる、というもの。
低温調理器内の加熱器にお湯を通し続けるため、つねにお湯が動いている状態で、
加熱村ができにくい、というメリットがあります。
炊飯器または保温鍋で作る鶏ハムのレシピ
加熱には炊飯器の保温か、シャトルシェフのような保温鍋を使います。
【材料】
- 鶏むね肉(皮なし) 1枚
- 塩 大さじ1/2
- 砂糖 小さじ1/2
【作り方】
1.鶏むね肉に塩と砂糖を擦り込んで、ラップに包み、冷蔵庫で一晩寝かせます。
2.冷蔵庫から1の肉を取りだして拡げたラップの上に置き、くるくる、しっかりと巻いて、両端をねじって止めます。
4.3をジップ付き密閉袋にいれてストローで空気をできるだけ抜きます。
5.鶏肉を加熱します。
<炊飯器の場合>
炊飯器の内がまに4の肉と70℃のお湯を入れて保温スイッチを押します。
<保温鍋の場合> 保温鍋の内鍋に熱湯を沸かし、4の肉を入れて再沸騰後2分加熱したら保温容器に入れます。 <低温調理器の場合> 40℃程度のぬるま湯を大きな鍋やバケツに入れて、低温調理器の温度を70℃にセットして運転開始。 お湯が70℃になったら4の肉を入れます。 6.60分置いたら取りだして袋ごと冷水で冷やします。 ※ジップ付き密閉袋の耐熱温度は100℃程度ですが、 この作り方では、ジップ付き密閉袋に入れてから直火にかけませんので、袋の耐熱温度以上に加熱することにはなりません。 炊飯器や保温鍋などが使えない場合、熱湯湯せんができるポリ袋「アイラップ」を使って、直火で70℃を保って作る鶏ハムの作り方をまとめました。 >>アイラップを使って湯せんして作る鶏ハムの作り方
冷まし方にも注意!
※冷めるときに時間がかかると、雑菌が繁殖しやすい30~40℃の温度帯が長く続くことになります。
冷水(夏場は氷も入れたほうがいいです)でできるだけ早く冷ますようにしてください。
常温になるまで自然に冷ます、という作り方は、この点でも、リスクがあります。
新鮮な鶏肉なら大丈夫なの?
鶏むね肉や、ささみを、「朝びき」など新鮮さを打ち出して、刺身で出すお店がありますが、
もし、家庭で、鶏ハムを作るときに、そうした新鮮な鶏肉が手に入ったら、中まで火が通らなくても食中毒の心配はないのか?
というと、
どんなに新鮮な肉でも、加熱が不十分だと、食中毒を起こすリスクがあります。
カンピロバクターという食中毒の菌は、ウシやヒツジ、ニワトリなどの多くが保菌している細菌で、人間が感染すると、食中毒の原因となります。
ニワトリの場合はもともと、生きていたときに鶏の腸管にいた菌が、解体時などに肉に付着したもので、カンピロバクターの有無は、肉の新鮮さとは無関係です。
鶏肉には、安全に生食できる基準はないのです。
鶏ハムつくりの落とし穴・食中毒のリスクを避けるするには? まとめ
沸騰させて数分煮たらそのまま鍋で冷ます、という鶏ハムレシピが、これだけ広まっている、ということは
ほとんどの場合、食中毒になってはないとということなんだとは思うんですよね。
ただ、この作り方では温度管理がきちんとできないために、鶏肉の大きさや温度、お湯の量によっては、鶏ハムの中心部が生のまま、ちょうど雑菌の繁殖に最適の40℃くらいでキープされてしまう、という可能性もあるんです。
できあがって切ってみたら中が生だった、という場合、フライパンでソテーしたり、オーブンでグリルしたり、唐揚げにしたり、という短時間高温調理の場合は再加熱、でいいんですが、
鶏ハムに関しては、再加熱して食べる、はしないほうがいいと思います。
自宅で作った鶏ハムをお弁当に入れる場合については、別記事にまとめてみました。